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映画を通して
フランスの歴史を知る

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次回の予定


映画『パリ空港の人々』
の各シーンより



パスポートを盗まれ入国管理局
で足止めを食らう主人公の男。



男の妻。空港に迎えにきたが夫
に会えずヒステリーを起こす。



空港で父の迎えを待つ少年。
彼が主人公の男に声をかけ共同
生活がはじまる。



国外追放となり国籍を剥奪され
た女性。 7ヶ月もここにいる。
仲間の食事を作り世話をしている。
どこにも帰る国がない 。



回想録を書き溜める元軍人と自
称する男



仲間たちとは言葉が通じない黒人。


少年が見たいというパリの街を
主人公の男がテーブルの上に
おもちゃを並べて再現する

そして、本物を見に行こうと誘う。



仲間たちは夜の街へとこっそり
繰り出す。


夜景を眺めて、それぞれが
望郷の念にかられる。



少年は、主人公の後をついて
行くことになる。







国境の隙間に落ちてしまった人たち A 

映画『パリ空港の人々』(1993年・フランス)

映画を通してフランスの歴史を知る 第5回 《4月16日》






『パリ空港の人々』 ストーリーは

映画の内容に触れると――。

空港のトランジットゾーンでパスポートも金も鞄も靴も盗まれたフランスとカナダの二重国籍を持つ男が、入国出来ず足止めを食らう。
男は、空港の一角で暮らす人たちに出会う。父親の迎えを待つ黒人の少年。国外追放となったアメリカ系の女性。回想録を書き溜める虚言癖のある自称軍人。言語の分からない黒人。男は、これらの奇妙な仲間と共同生活を始める。怪訝そうだった男も次第に仲間と解け合っていく。

黒人少年は、父のような技術者になることを夢みる。が、父親は、技術者ではなく、掃除夫で、不法入国就労のため強制送還されたと聞かされる。少年はうちひしがれる。
男は、少年がパリの街を見たいという願いを叶えるべく、リスクを犯して仲間全員で大晦日の夜に街へと繰り出す‥‥。眩い光を目にし「想像とちがう」と少年はつぶやく。
それぞれが望郷の思いに駆られる。

翌日、男は身分証が届き、空港から出されるが、仲間たちとの別れを惜しむ。少年が後を追う。男は引き返すように説得するが、二人は一緒に歩み始める。


故郷を失った人々が、いかに夢を持ち生き続けるか。半ば現実、半ば夢物語に綴られた大人のメルヘンでもある。



「オスクール」はフランスで必須

「さあ、ここで問題です。男は、誰にパスポートを取られたのだと思いますか?」
主人公の男は、カナダの空港でうたた寝している間に盗まれた。
「恐らく、トランジットゾーンで働いている職員でしょうね。職員は自由に出入りできる。
お金がなく、つらい仕事をしている人が多い。だから、置き引きをする、アル中を狙う」

「“オスクール”この言葉を覚えておきましょう」
「“助けて”です。さあ、みなさんご一緒に」
全員で「オスクール!」
パリ空港でこの言葉を叫ぶと、かならず私服警官が来るという。
2001・9・11以降、警備が厳重になり、銃を持った兵士や機動隊が絶えずパトロールしているそうだ。


映画の中にあるテーマを一つ一つ取り上げて、解説が入る。
パスポートの問題。自分が自分であるという身分証明書だ。これを失くすと、「自分は自分だ」と言っても認められない。人に認識されないと自己のアイデンティティすら揺らいでくる。国籍の認定の仕方も国によって様々だ。フランスは二重国籍を認めている。人間の作り出した制度は、国によって違う。その国どうしがぶつかるところでは綻びが生じ、その狭間に落ちてしまう人間も出てくる。

「不自由な状況でも夢を持って」

最後に大嶋さんが自分の思いを話す。

「日本でも震災で被災し、故郷を失った人たちがいます。ちょうど映画の人たちと同じような状況かもしれません。映画では、閉ざされた中でも生きる力を感じる。どんな状況の中でも夢を失わずに生きている。夢を失わないでほしいと思います」


「アウシュヴィッツの人たちも、生き残った人たちは絶えず夢を持ち続けていた人だと聞きます。そして美しいと感じる心を持った人が生き残ったと」

毎回、何故かタイムリーなテーマだ、と思う。
私たちには、大嶋さんの言葉が、心に沁みた。
さて、次は、大嶋さんの背景と、記者の感想。(記事:いわた)

>>自己の存在理由とは


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