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イヴ・モンタンの魅力に迫るB 

       ――記者の目  @に戻る Aに戻る

ギャルソンという生き方を考える

男アレックス

「厨房は俺の城だ」と怒鳴り散らす料理長に対しても、男気を見せる。



同僚ジルベールのミスに怒るコック長に、「すぐ謝れ」と言い返すアレックス。
この一件で、「ジルベールが店を辞めるなら俺も辞める」と支配人に言い放ち
同僚をかばう。人情味を持った男アレックスを感じるシーンだ。




女性には大モテのアレックス。
どれほどの女性が彼の周辺に登場するのか抜粋してみた。


若いコリーヌと。早々に別れ話からスタートする。


金持ち夫人のグロリア。彼女から遊園地資金を出資してもらう。


クレールに恋するアレックス。しかし、恋は実らず別れを告げられてしまう。


遊園地建設の商談の帰りには、相手の秘書の女性と一夜を共にする。

女たらし?

女性だけを辿ると単に女たらしとも見えてしまう。そう見てしまうと、
恋したクレールへの気持ちも、どこまで本気だったの?とも疑いたくもなる。
しかし、前半で、男アレックスを見せているだけに、
別れのシーンは悲しくなる。
その切なさは『枯葉』の歌そのもの。心の中でこの曲が聞こえてくるようだ。

アレックスに自分の気持ちを告げに来たクレールが口にする言葉は、
「私はあなたを求め理解したけれど、
あなたは望まなかった、私を求めなかったわ」。

なぜ、アレックスは求めなかった?と思ってしまう。それが彼の優しさなのか?
去る者は追わず、来る者は拒まずといった心境なのか?

あるいは、 ふと、ギャルソンという仕事ぶりが重なってくる。

「ギャルソン!」 と呼ばれ、颯爽と駆け寄り、料理を案内し注文を聞き、コックに伝え、
料理を運ぶという給仕の仕事は、決して客のオーダーの中身にまで首を突っ込まない。

不器用な ジルベールが、6人から6種類のオーダーを受けて、コック長に
「殺す気か! お前は、客にナメられている」と怒鳴られたりもするが、
ギャルソンのある一面ともいえよう。
その点では、アレックスの身のこなし闊達さは、隙がない。
女性に対しても、その一貫した態度を見る思いがした。

それは、 初老を迎え、人生を達観しているようでもある。

クレールに、別れた妻のことを聞かれ
「“時は過ぎ行く”さ」と呟くアレックス。

大嶋さんによれば、直訳は「川は橋の下を流れていった」という意味らしい。
この言葉が、クレールとの別れの伏線にもなっている。

初老の独身男の生き様としては、とても魅力的だ。
どこか、惹きつけられてしまう。おそらく、見る年齢によっても様々な受け取り方が
できる作品なのだと思う。
映画は作り話ではあるが、どこかリアリティを感じ、自分自身の理想や現実を重ねてしまうものだ。

最後は一人で

最後に映画のひとつの象徴ともとれるワンカットを紹介したい。
ブラッスリーの客の変化が、ストーリー展開を言い尽くしている。


来客の二人のカップル。最初はテーブルに向かい合って座る。
注文の品に迷う女性に愛想良く対応するアレックス。


2回目は、女性の右位置に男性が座る。
この時は、女性から男性に優しくスープを口に運ぶ。


3回目は、隣同士で座る。男性は、すでに女性に興味を無くしている。
女性も料理が口に合わない様子。


4回目は、男性一人で訪れる。ところが、この時の男性の顔は和かだ。

遊園地でのラストシーンでは、関わりのあった女性たちはそれぞれ新しいカップルと結ばれていくのでアレックスは独り身となっている。が、スコールを浴びながらも、まだまだ前向きなアレックスを感じるのだった。

(記事:いわた)

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