映画を通して
フランスの歴史を知る
第1回
第2回
第3回
第4回
第5回
第6回
第7回
第8回
次回の予定
映画『さよなら子供たち』
の各シーンより
休日を終えて駅で母と分かれる
ジュリアンは寄宿学校へ向かう。
転入生のボネはユダヤ教徒。
夜中に起きてお祈りを捧げる。
ベッドの隣で、ボネの行動を見て
いたジュリアンは、ボネが何者で
あるか、彼のロッカーを探る。
ボネの書物に書かれていた文字を
鏡に映すと、ジャン・キベルシュタ
インというボネの本名を見つける。
ボネがユダヤ人であることを知る。
休みの日。宝探しの遊びに出か
ける。二人の間に次第に友情が
芽生えていく。
ジュリアンはボネに豚肉のパイを
差し出すが、ボネは拒否する。
(ユダヤ教では豚肉は禁止されて
いる) 理由は言わず、喧嘩になる。
聖体拝領の儀式。カトリック教徒
になるための儀式。 この場にな
ぜボネが立っているのかは謎だ。
ジャン神父はボネがそこにいる
ことに驚く。
聖体を与えるジャン神父と 口に
するジュリアン。これでカトリック
教徒となる。
ナチス・ドイツ軍のゲシュタポが
学校に現れる。ユダヤ人狩りだ。
ゲシュタポに密告したのは、学校
の料理番を解雇されたジョセフ
(正面)によるもの。そのことに
唖然とするジュリアン(背中)
ジャン神父とユダヤ人の生徒3人
がナチス軍に連行されていく。
別れのシーン。見送る生徒たちに
「さよなら子供たち」と声をかける。
この言葉が映画のタイトル。
見送るジュリアン。目には涙。
「この日の朝を私は死ぬまで忘
れない」と監督はコメントする。
ユダヤ人とは、ユダヤ教とは、その歴史
映画『さよなら子供たち』(1987年・フランス)
映画を通してフランスの歴史を知る 第4回 《2月26日》
講師の大嶋優さん(関西学院大学フランス語講師)
ナチスによるユダヤ人大量虐殺、ホロコースト・・そんな言葉を耳にすると、悲惨な戦争をイメージするだろうか。知識としてではなく、その体験を今に伝えるものとして、今回の映画は、あまりにも直接的に感情を揺さぶるものだった。
悲しみと、どんよりとした重さで一杯になった。
歴史とは、紐解けば紐解くほど、人間の悲しみ醜さを浮き彫りにするものなのか。
ユダヤ人とは、ユダヤ教とは
まずは講座の様子から。
映画の前に大嶋さんによる解説で始まった。
「今回のテーマは、ユダヤ人、ユダヤ教、反ユダヤ主義です」。
「映画の背景を知らないと、映画の持つ意味や各シーンの意図が理解出来ないから」と、短い時間でポイントを絞って伝える。
英国やフランスでは、「ユダヤ人(Jew)」を辞書で引くと「貪欲な人、高利貸し」の意味がある。こんなところにユダヤ人に対する蔑視がある。昔、キリスト教では、金融に携わるものは卑しいとして、金融の仕事を禁止していた。代わってユダヤ人がしたので、金貸しで大儲けしたユダヤ人を揶揄し、それが言葉となって残っているという。
ユダヤ人とは、歴史上たえず虐げられ、安住の地のないまま世界に離散し、今も中東ではパレスチナ問題を抱えている。
そのユダヤ人とは何かの定義を旧約聖書を取り出して、大嶋さんが紐解いてくれた(上の写真)。
歴史上対立しているユダヤ教、イスラム教、キリスト教は、実は兄弟のような宗教で、みな旧約聖書を教典にしていること。旧約聖書にはアダムとエバなどの神話が綴られ、私たちが聞くとちょっとユーモアにも受け取れる内容もある。その系譜を辿るとユダヤ人としての定義があること。
また、ユダヤ人は、ローマ帝国に滅ぼされて以来、自国の領土を持たない流浪の民となり世界に離散した。唯一、ユダヤ教をアイデンティティとしてまとまってきた民族で、選民思想・メシア思想が根底にある。
ローマ帝国がキリスト教を国教に定めてから反ユダヤとなり、十字軍の遠征では、ユダヤ教を迫害し、19世紀には反ユダヤ主義思想が広がり、人種的にユダヤ人を差別するようになった。そして、ナチス・ドイツ軍によるユダヤ人大虐殺へと歴史は向かう。
ボネ(ユダヤ人)とジュリアン(カトリック教徒)の友情