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映画を通して〜大嶋講座1年ぶりに開講!  

 映画『海の沈黙』 別れの言葉の意味は?817日》  


講師の大嶋優さん。鈴鹿カルチャーステーション・クリエイティブスペースで

 大嶋さんが取り上げる映画は、いつも心を打つ。
 なかなかお目にかかれない名作に私たちを出会わせてくれる。
 今回の映画は2004年制作の『海の沈黙』。原作はヴェルコールの同名の小説で、フランスレジスタンス文学の代表作と言われ、何度か映画化されている。
 2004年制作といえば、ごく最近だが、なぜ、再びレジスタンス文学なのか?
 大嶋講座は、終戦記念日から2日たった8月17日、一年ぶりとなる開講となった。
 まずは、吉田レポートを紹介しよう。





フランス映画をみる  2014.08.22 Friday  映画『海の沈黙』から  
吉田順一

約1年振りの大嶋さん解説付きのフランス映画を見る機会とても楽しみだった。映画そのものはもちろんのこと、大嶋さんの語るあの映画解説が観る者の心を緩やかに映画の世界へと誘ってゆくことを、今回痛切に感じている。
受付の仕事を自分からすすんでやったのだけれど、どこかあの解説を軽んじている自分があったのではないかと思う。というのも、会場に入った時には解説の3分の2ぐらいは終わっていたようで、ホワイトボードにはそのあとが記されていた。返す返すも残念な気がしてならない。翌日片付けのために会場に入った時、ホワイトボードにはもう何も残されていなかった。

 前置きはこのぐらいにして映画に入ろう。

「アディユー……」
映画の最終場面近く、大尉がロシアの前線へ出発する時、目から涙が溢れながらジャンヌが彼に語りかけた言葉。
この映画は、この場面に焦点が合うべくして作られた映画といってもよいくらい、僕の心から雑念が消え去り、ただひたすら相手を思う心のひたむきさを感じた。

「海の沈黙」という映画のタイトルについて
映画の中では、大尉が暖炉のまえでソファーに座るジャンヌとおじいさんに語りかける場面が何度かある。その中でも彼が"海について"語るところが印象的だった。まるで二人について、もっといえばジャンヌについて話しているように感じられた。
「海はものをいいません」「波には関心がありません」「海にはわたしをひきつける隠されたメッセージがある」「海が何を言いたいのか理解したい」
そうして二人に会えたことに感謝を述べる。

音楽
音楽家でもある大尉は、バッハの"プレリュード"を宝物のように思っている。そのことがクリスマスの夜に彼の口から聞かされる。彼が初めてジャンヌの家に来た時も、ジャンヌの弾いていたのは"プレリユード"だった。ふたりの心を結びつける重要な働きをこのメロデー―- 音楽が果たす。
そしてそれは、ある日ドイツ将校二人が大尉のところへ来たその夜、乗ってきた車の下にレジスタンス派が爆弾を仕掛けるのを見て、ジャンヌは大尉に伝えようとするが、ドアをノックすることができず朝を迎える。外では昨日の将校たちの声がする。
もうすぐ彼が降りてくる。そして、彼らと一緒に車に乗って出発する。そうしたら、車は爆破されてしまう。彼は死んでしまう……。と彼女は考える。そうなることを阻止しようと、彼女は懸命にピアノを弾く。"バッハのプレリユード"。出かけようとした彼は、思わず立ち止まり、彼女の弾く音楽に、彼女に目を向ける。
「どかーん」という爆発音。車は炎上、彼は死を免れた。

別れ
前の晩「大事なお願いがあります」と言って、大尉は二人に話をした。それは、「今まで私がこの家で話したことは全て忘れてください」ということだった。そうして絶望的な心のままに、ロシアの前線へ行くという。それはまるで"死にに行く"みたいに感じられた。

尊敬と敬愛
時代は1941年、ドイツ占領下のフランス。どこか荒々しさや獰猛な人間が人間でないようなそんな匂いを感じさせない映画だった。切り口がそこではなかった。大尉の口をついて出てくる言葉は、「祖国を愛する人を尊敬します」「自分の責務に忠実な二人を尊敬します」だった。自国のみならず他国の文化を尊重し、そこの人々を尊敬する。そんな姿勢が貫かれていたように思う。

本当に互が互いに尊敬し敬愛し合っていたら、争いなど起こりようがないものを……、戦争という絶望的な極限状態の中で、ここまで大尉に語らせる監督の意志はどこにあったか。

近々に岩波文庫出版の『海の沈黙』が手に入る予定だ。このベルコール原作を読み、またいつかこの映画に立ち戻る日があった時、僕はどんな心でこの映画に立ちあえるだろうか?(吉田順一)

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映画の中で、何度か胸を詰まらせてしまうシーンがある。 それは戦争という悲劇が訴えかける切なさだ。 同時に、人間愛や文化への敬意を、戦争の醜さとを対照に、浮彫にする。 原作には男女の恋心は一切ない。一人のドイツ人将校が、接収したフランスの家で老人と娘に淡々と思いを語るだけで、ただ沈黙を保ち続ける二人の姿だけが闇に見えるだけだ。まるで沈黙する深海の中にいるように…
原作も、映画も、その深い海に潜るように、人間の実在を汲み上げようとしているようでもある。次回では、記者の映画評をお届けしたい。(いわた)


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