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「美し国おこし・三重」ご縁づくり交流会
 

 
 「明日のコミュニティの創り方」開催!615日》  


鈴鹿カルチャーステーションで

県と共催のイベント

三重県がサポートし地域活動を応援する「美し国おこし・三重」によるイベント、「鈴鹿地域ご縁づくり交流会『明日のコミュニティの創り方〜人と人とが紡ぎ出す“やさしい社会”へ〜』」が、6月15日、鈴鹿カルチャーステーション(SCS)で開かれました。SCSも共催です。

前半は、講師によるセミナーと事例発表。後半は、会場をカフェスペースに移動して、くつろぎながらのディスカッションとワールドカフェ。各地から集った活動家たちが、新たな出会いと繋がりをつくる場となり、大いに盛り上がったイベントでした。
中味をチョイスしてご紹介します。



「美し国おこし・三重」実行委員会の方々が、午前中から会場準備。


下野幸助氏(三重県議会議員)

セミナーの冒頭は、下野議員が立ち、「今日の講演を楽しみにしています」と挨拶。
鈴鹿市生まれの鈴鹿市在住です。


◆東京と京都でコミュニティ・スペースづくり


熊倉敬聡氏(京都造形芸術大学芸術学部アートプロデュース学科教授)

「昔は、人と関わることが好きじゃなかった。そんな私が、コミュニティ・スペースづくりをしています」と、生い立ちにも触れて、これまでの活動の経過を語る熊倉先生。
何か新しい試みというのは、その発想も言葉も斬新で、周囲には理解し難いでしょう。大学の授業も、計画のない計画を立て、「学生自らが学びをデザインし学ぶ」という授業の試みをしてきた先生です。肩に力の入らない自然体で話します。

東京では、大学生を地域社会へと開くための学び場として「三田の家」を立ち上げ、運営しました。そこは、いかなる目的を持たないスペースで、何をしてもいい、誰が来てもいい場です。その実践が、今では、文化的遺伝子として各地に広がっているのでは、と言います。
現在は、京都で新たなSocial Innovationの拠点としての「Impact Hub Kyoto」の運営に携わっています。

「社会を変えたい。しかし、社会を作り出していく、人間自身が変わらないと社会も変わらない。そのために、人間の精神性の変革から」というのが「Impact Hub Kyoto」の発想です。

資料からその一部を引用すると――
「Impact Hub Kyotoは、今の社会、世界をより良いものにしたいと願うひとたちが集い、学び合い、新たな行動を起こす場所です。しかし、社会や世界を変えるためには、まず何より自分自身が変わらなければ、持続可能なインパクトも生まれません。
そこでImpact Hub Kyotoは『社会の変革』『人と自然との関係の変革』とともに『自分自身の変革』を促します。この3つの変革が渦巻きあうところで、これまでにない新しい道、Art of Livingを共に創り出したい。それを極める“道場”こそが、Impact Hub Kyotoです」

能舞台、茶室、竹林の庭のある、京都ならではの和的空間を演出した場だといいます。
とても魅力的な試みです。



大学の廃校を使ってコミュニティ・スペースを作った時に出会ったのが、今の奥さんだとか。隣の部屋にお子さんと一緒にいる奥さんを指し示した場面。会場も驚きの声。




◆組織化しないコミュニティとは


近藤隆二郎氏(滋賀県立大学環境科学部環境政策・計画学科教授)

SCSでは、2回目の登場。 前回は、JR能登川駅前の古民家位を拠点に、絵(芸術)を通して子どもを育む地域のコミュニティ・プロジェクト「エトコロ」の試みを紹介しました。
今回は、「組織化しないコミュニティとは―Auroville の経験から―」と題して、インドにあるエコビレッジ・オーロヴィルを取り上げます。近藤先生は、人間社会と環境の絡み合いに関心があり、個人と組織やシステムの関係について研究し、調査や実践を試みるユニークな活動をしています。



その一つが上の写真。 「未来予想絵図」のパンフレットです。琵琶湖博物館でのイベントで描いたものだといいます。自分たちの未来がどんな姿になっているか、それを共同で巨大な絵に仕立てたものです。この試みもたいへん興味がわきます。

最近、注目している言葉があるそうです。

「『杜撰(ずさん)』という言葉で、私はいい意味で使っている。
ゲームのシナリオライティングの世界では、不完全なシナリオの方がつっこめる。粗があった方が人が参加できる。何か困っている人がいることで関係が生まれる。パーフェクトを目指すのでなく、誰にでもつっこまれるような計画をつくることが出来ないかやっています。これは行政相手ではできない

「組織化とは、結局、責任が発生したときに、誰が負うか、という問題。組織が責任を負い、個人は責任をとらないシステムではないか」といいます。
水俣病で国と戦った緒方正人さんの「一人の『個』に帰りたい」という言葉を引用し、個として生きることの大切さを強調しました。



そんな近藤先生が出会ったのが、インドにあるエコビレッジオーロヴィル(Auroville)です。
「インドにエコヴィレッジがあることにまず驚いた。更に驚いたのが、組織がない、と言われたことだ。リーダーはいるが、権力はない。計画もないという。それで何度も通うようになった」

「組織化するなと明言している。制度を作ってしまうと、人間はそれに使われる」



日本人でオーロヴィルに暮らしている人もいます。
オーロヴィルの思想や暮らし、そこでの様子などを紹介しました。


◆アズワンコミュニティの事例発表


坂井和貴氏(一般社団法事人・鈴鹿カルチャーステーション代表理事)

続いて、鈴鹿カルチャーステーションの坂井さんから、鈴鹿で試みる「アズワンコミュニティ」の実践発表です。

「社会って何だろう? 明治以前は、“社会”という言葉はなかった。福澤諭吉は、西洋のその言葉を“人間交際”と訳した。それが今では、人から離れたものになっている。
社会を人と人とのつながりと見た時、社会がよくなるとはどういうことだろうか?便利になったり道路や建物が出来たりと社会が発展したと思っても、人と人のつながりがよくならなかったら、社会がよくなったとはいえないのでは?」と投げかけます。

「持続可能な社会というとき、人と人のつながりが持続していくものでなければ。何かあったら別れたり、離れたりでは続かない。それには、お互いが話し合える状態になって、話し合えれば、いろんな問題も解決していくのではないかと思う」と結びました。



3人の話が終わり、会場から熱い拍手が贈られます。


◆ディスカッション



後半は、会場をカフェスペースに移して、お茶やお菓子を頂きながら会場との質疑応答にはいります。
「講師の皆さんはお水でお願いします」と冷やかす司会の志村さん。
和やかな雰囲気の中、講師も、本音か本気か、冗談か、笑いを誘い、会場も大いに湧きました。


「美し国おこし三重」地域担当プロデューサーの志村和宏氏

会場から、熊倉先生に、現在の「Impact Hub Kyouto」の具体的な活動についてお聞きしたいと質問。

「先ほど、その点の紹介を忘れていました。杜撰でした」と一言、現在の課題についても言及します。


「 実際、広い場所です。家賃がかかる。ボランティアと雇用者とで運営しているが、お金が絡むと、そこに雇用関係が生まれる。決して理想的にうまく言っている訳ではない。東京でやって、京都でやろうと、志をもって始めたが、実際やってみると、運営面でいろいろと問題が出てくる。組織を回していくことが先行してしまい、人間関係が崩れてしまうという問題もある」。



「維持・運営という点では鈴鹿カルチャーステーションではどうでしょうか?」(司会)

「一人で悩んでもしょうがないので、周りと相談してやっている。だから暗くならない。
検討しながら、ここでやれることをやっている。
でも、いつ無くなるか、わからない。無理だと判断したら、切り替えるし、あまり維持しようとも思ってないので、 皆さん、これが最後だと思って下さい。ころころ変わると思うので、今日の姿は今日だけです」(坂井)

(この辺の運営やあり方に、アズワンコミュニティの秘密がありそうでした)



更に、会場から質問が出ます。
「“個として生きる”というお話がありましたが、先生自身はどのようにお考えですか?」

宮本さんにもその質問が向けられます。


「美まし国三重」総合プロデューサーの宮本倫明氏

「『美まし国・三重』は、グループ活動を応援するという活動で、 社会実験的な取り組みを、三重県から相談があり、やっている事業の一つです。
完璧な民主主義はどこにもない。そこで、個々のみんなの意識が変わることで補完できないかと、その実験的な試みです。グループを組んで、地域をなんとかしたい。みんながみんなをサポートで出来る仕組み。お互いが融通し合うことで、地の力を強くしようということです。
個人ってどこまでが個人なのか、わからなくなる。
生きるってことは自分は、何かによって成り立っていることだ。コミュニティだったり、家族だったり、太いパイプで周囲とつながっているから個が成り立っている。赤ちゃんが母親と紐帯でつながっている。そのへその緒を切っても、周囲とつながっているのが個のような気がする」


◆ワールドカフェ



講師とのディスカッションが終わると、参加者どうしのワールドカフェに。
テーブルを囲んで、少人数で、お互いを知り合う場です。20分くらいでシャッフルして、また別のメンバーと顔を合わせます。
今回一人一人に配られたプログラムには、参加者名簿が載っていました。
個人名、グループ名、プロフィールが紹介されています。
ワールドカフェでは、その名簿を見ながら、互いの活動やお互い自身を知り合い、課題を共有し、交流の場になりました。

「人と人とが紡ぎ出す“やさしい社会”へ」の一端が垣間見れたのではなかったでしょうか。新たな繋がりや出会いが生まれるコミュニティ・スペースとも言えるでしょうか。

参加者は、各地で積極的に活動されている方々ばかりで、そういった人たちが集ったということも、今回のイベントの大きな成功だったように感じます。
イベント主催者「美し国おこし・三重」ご縁づくり交流会の意図が見事に実現していたように肌で感じました。参加者の皆様、講師の先生、そして実行委員会の方々お疲れ様でした。 (記事:いわた)

鈴鹿カルチャーステーションは、元気な地域づくり、一人ひとりの活動を応援しています。

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