トップご挨拶イベントNEWSお知らせレンタルカルチャーエコ街のはたけてっらこや館内アクセス

過去の記事へ |次の記事へ | NEWS一覧へ

感性に訴えかける『グラン・ブルー』の世界 

映画 『グラン・ブルー』(1988年、監督リュック・ベッソン)

フランスまるかじり 大嶋優のオーシネマ・カフェ 第19回 《9月8日》

 >>> 吉田さんのレポート  >>>記者のレポート



        講師の大嶋優さん(関西学院大学フランス語講師)

先回の、ヌーベル・バーグの代表作『勝手にしやがれ』に引き続き、今回は“ネオ・ヌーベル・バーグ”の作品『グラン・ブルー』を取り上げた。その映像と音響は、感性を刺激し、未知の世界に誘い込んでいく。監督自身がスキューバーダイバーで、その魅力を表現したかったとも聞くが、映画から呼び覚まされる世界は、言葉による問いかけではない、“ネオ・ヌーベル・バーグ”の手法だという“感性”への働きかけ。スケール感たっぷりのロマンある映画にも感じた。まずは吉田レポートから。 (いわた)


『グラン・ブルー』の世界に導かれて


ジャックとジョアンナ

「私の愛をみてきて」



海に沈んでゆこうとする男に対して、「私、妊娠したのよ」と叫ぶ女。からだを半分海に沈めた男は、微かにうなずく。「どうして、行きたいの(海の中へ)?」女は問う。「みてきたいんだ」と、男は云う。女は、「私の愛をみてきて」と言って、潜水服をとめているロープを引く。男は放たれて海の中へ落ちてゆく。深い海の中、潜水籠に片手をつかまりながら、もう片方の手で、イルカを手招く‥‥そして、最後籠をつかんでいた手を離すと同時に、一杯に伸ばした右手は、イルカの体をとらえていた。

大嶋さんの紹介した今回の映画は、“ネオ ヌーベルバーグ”作品と呼ばれているリュック・ベッソン監督作品『グラン・ブルー』
前回は、“ヌーベルバーグ”作品の『勝手にしやがれ』この映画はとても哲学的で、なかなか一筋縄では理解できない作品に思えている。それに比べると、映像にしろ、音楽にしろ、ひとりひとりの登場人物にしても、観ている自分の側から割合と入って行きやすいものを感じた。それは何故だろう?こうして書いている今も、これを書かせる自分の感性に委ねられているものを感じるからか?「正しい」とか「間違っている」とか考えることも無く、それに導かれるままに書き進めてゆきたい気持が、自然と湧き上ってくる。

「 海の中がいい ‥」



“エンゾ”との別れの場面。「海の中がいい‥‥あっちへ逝かしてくれ」。そうジャックの目をみつめながら静かに息を引き取ってゆく彼。そして、ジャックは彼を海の中へと送り出してゆく。このあたり『勝手にしやがれ』の最後“ミシェル”が、自分の手で眼を閉じてゆく様と僕にはダブって見えてくるところがある。ここに人間、その人の意志というものを感じるのはたやすいかもしれないが、“‥‥あっちがいいい”とエンゾにいわしめるもの、そこに至るまでのジャックと、エンゾの心の動きを丁寧に観てゆこうとしなければ、多分浅い理解に終わってしまうのだろうと思う。単なる友情とかでは到底理解不能の、深い無意識の世界にまで降りていって初めて観えてくるかもしれない豊かな世界を想像する。

イルカの意味は?



ああ、それにしても、あの財布の裏に収められた“イルカの写真”は、一体なんだったのだろう?! 父を海で亡くし、母は早くにアメリカへ戻ってしまい、ジャックにとって家族といえるものは、なんだったのか?
「さっき会ったね」と言って初めてあったジョアンナにそう言うジャック。海の中で遊んだイルカの顔、眼に、そういえば彼女は似ているなと、僕は瞬間思った。

時間と共に映画の印象はどんどん薄れてゆく。そうして、僕の頭の中には、この映画を紹介した大嶋さんという人に関心が湧いて来る。そして、彼に関心を持たせ続けるフランスという国、そこの映画をはじめとする文化、その土壌というものにすこしづつ興味が湧いてきているのも今感じている。

(吉田順一)    このページのトップへ


この映画は2時間40分に渡る長編ドラマ。そのため講座中では全編見ることが出来なかった。結末も、どうも腑に落ちない。大嶋さんの個人的な見解を伺うが、難解なフランス映画だとも感じてしまう。ところが、自宅でゆっくり鑑賞すると、講座では解けなかった監督の意図が、カメラワークや各シーンの構成から、一つのメッセージとして自分の中に築かれて来るようだった。
映像で訴えたかったものは何だったか。大嶋さんの解説を元に記者のレポートを記してみたい。お楽しみに。
(記者:いわた)


記事は続く>>> グラン・ブルーの壮大なるロマン・夢

このページのトップへ

since 14.Jun.2010  Copyright SCS All right reserved.