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▼内藤正明氏
NPO法人循環共生社会
システム研究所代表理事。
京都大学名誉教授。










▼大原興太郎氏
三重大学名誉教授。
松坂農業公園ベルファーム社長。
NPO法人三重スローライフ協会
理事長。
「懐かしい未来」をコンセプトに
スローライフ運動を推進する 。







 

「新たな豊かさ社会」をどうつくるか 

 工学の内藤正明氏と農学の大原興太郎氏の対談《11月21日》



「地域再生コーディネーター養成講座」の公開講座として、内藤正明氏(京都大学名誉教授)と 大原興太郎氏(三重大学名誉教授) による対談が、11月21日に当館で開催された。演題は『「新たな豊かさ社会」、私たちはどうつくるのか』だ。

現代の 石油に支えられた工業文明・企業社会は、石油の枯渇と同時に終焉を迎えるだろう。それが、明日か、それとも10年先か、時間差はあるだろうが備えは必要だ。
しかし、来るべき持続可能な社会、自然と共生する新しい豊かさ社会を、私たちはどう描き、そしてどう実現するのか。
この課題を、“今”という石油文明にどっぷりつかった社会の中で考え、着手しなければならないことも、また、一つのハードルとなる。


 大原興太郎氏(三重大学名誉教授)         内藤正明氏(京都大学名誉教授)

今回は、農学者として歩んでこられ、スローライフ運動を進める大原興太郎さんと、工学者の立場から循環共生型社会を提唱する内藤正明さんの初対談となった。

大原さんは、現在、経営者としてスローライフを理念に農産物の直売所やレストランなど総合事業を展開している。
「明治以降、大きな経済不況が2度あったが立ち直ってきた。今は3回目の波を迎えている。しかし、立ち直る基盤が崩壊している。人とのつながりを失い、子ども達の豊かさ観がモノに依存していることに危機感がある。そこをどう立て直していくかが課題だ」と大原さんが訴える。

「循環共生型社会づくりは、地域の特長や人々の持ち味を如何に活かして地域コミュニティを再生していくかにある」、というのが内藤さんの持論だ。「地域再生」「コミュニティづくり」は両氏のキーワード。大原さんの進めるスローライフ運動、事業経営は、その試みともいえるだろう。



「花見酒」の経済?

内藤さんは、今の世界経済は、「花見酒」(落語の噺)の経済だ、という有名な話を紹介した。
 二人の兄弟が、向島の花見客に酒を売ろうと、酒樽を担いで出かけていく。途中で弟の方が10銭払うから酒を一杯売ってくれと言う。兄は10銭を受 け取って、弟に酒を売る。しばらく行くと、今度は兄が先ほど受け取った10銭で、弟から酒を買う。お互いにこれを繰り返し、向島に付いた頃には、酒樽はカラッポ。本日の売上げは、しめて10銭ということに。

この酒樽が地球で、酒は石油だ。日本とアメリカを二人の兄弟に置き換えれば、よく分かる。お金のやりとりがGDP。経済は回っているように見えるが石油はどんどん消費され、気がつけば空っぽ、となる。飛び交っているお金の量も実体経済の何十倍も膨らみ、みんなが共同幻想の中にいるというわけだ。

戦後の何もない暮らしを経験して育ってきた内藤さんにとって、「あの暮らしが原点にあるから今の豊かさはどこかウソだ、という実感がある」という。
大原さんも自分の立ち返る原点を自分の中に持っている。 「若い世代は、物質的な豊かさ--コンビニ・携帯・パソコンの社会にすっかり依存しており、脆さを感じる。何もないところから築いてきた逞しさを伝えるのが私達世代の役割だ」と強調する。

キーワードは「遊び心」

これからの循環共生型社会は、農系社会にどう転換していくのか、が焦点だ。
だが、「農業をやろう」と簡単にはいかない。技術もない、土地もない、儲からない、では腰も重くなる。そこで、「遊び心」で、「趣味を兼ねて」、自宅の庭先で、プランターで、と小さなところから始めていくのがよいのでは、という話になった。
子どもたちの体験の場を作るのも「遊び心」で。 いざとなった時に備えられるのでは…。



後半は、参加者からの意見も活発に飛び交った。

炭を焼いて、それを燃料にして農業ハウスの暖房に活かそうという試みとか、
子どもたちと森にキャンプに行き、電気ガス水道のない暮らしを体験し、感動を味わったエピソードなども紹介された。

地域社会が大きな単位で変わっていくには、やはり、そこには一人か二人、芯になる人がいる。それがコーディネーターの役割では。「遊び心」で楽しんでいくことだと結んだ。
(いわた)


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