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牛飼いになって物語る 

『今こそ宮沢賢治を読もう』E 『オッペルと象』  《8月28日》  


児童文学者の牛丸さん

「オッペルと象」−牛飼いになってものがたる<宮沢賢治講座>
        
                         (宮地昌幸さんのブログより

牛丸仁先生にとって、入院生活は良いことばかりではないらしい。
結構、いろいろやることや、病室の隣近所のつきあいに、忙しくなるときがある。
先生は、三重の人を「西の人」と呼んで、「西の人は早口で、しゃべっているときに同時にしゃべる、そして声が高い」と言われた。はっと、胸に手を当てた。

外からの情報がすくない入院生活のなかに、教え子の一人から手紙が来た。
「教え子」といっても、その方は大学教授で、文学を学生に講義している。
牛丸先生が信州大付属小学校で、子どもたちに語りかけてくれたことが、貴重な体験であったという。

「おだやかに、しずかにはなしてくださった。まくしたてるのとは、違う。ゆっくりと、論理的に、しらべていく。これが今、学生に向かう時、じぶんにとってのテーマです。」といった内容と聞いた。
この辺も、なにか考えさせられる。

宮沢賢治「オッペルと象」――いつものように、全文がパソコンで印刷されている。
今回は、副題「ある牛飼いがものいがたる」というのにちなんで、参加者の一人ひとりが”牛飼い”になって、ものがたることになった。



はじめに、牛丸先生が“牛飼い”になって、ものがたった。
途中で語り口を変えた。一つの節を、7語・5語とはっきりリズムをつけた。
宮沢賢治は、この作品最後まで、七五調で拵えた。

“牛飼い”が参加者のリレーで変わるので、そのたびに、そういう物語になった。

白象が、ある時、オッペルが主人の稲こき場に現れた。
オッペルは機を見て、「ずっとこっちにいたらどうだい」とはたらきかけた。
白象はけろりとして、「いてもいいよ」と答えたものだ。

「こっち」というのは、どういうことだろう?という問いかけ。

白象は、オッペルから言われるままに、働いた。
オッペルは、白象がなんでも素直に受け入れて、言うがままに動くので、うーんとこきつかった。

白象は、苦しくなって、仲間の象に助けを求める。

怒った象の群れは、オッペルの館に押し寄せ、オッペルを「もうくしゃくしゃに」つぶしてしまう。

案外、スムーズに、たくさんの“牛飼い”は語り終えた。
オッペルは、調子にのりすぎたんじゃない?

ここで、牛丸先生から、投げかけ。
 『最後に

  「ああ、ありがとう。ほんとうにぼくは助かったよ」
   白象はさびしくわらってそう言った。

  ここのところ、「白象はさびしくわらった」とあるが、この「さびしくわらった」というのは
  どういうことか、ちょっと、みんなから意見だしてもらったらどうかな』

参加者から、いろいろ感想があった。
この辺は、もし関心がある方あれば、実際に作品にあたって、そこのとこ、考えて見るのもおもしろいかもしれません。
参加者の意見や感想を聞きながら、牛丸先生は「いや、今回は、みなさんの話を聞きながら、じぶんの中がはっきりしてきました」と言われた。
それが、どんなお気持ちから言われたのか、いまこれを書いていると、「どんなかなあ?」とこころに、残る。

教え子からの手紙を引用されて、「これからは文学の時代がやってくる」と言われた。
これも、その時は「そうかあ」と聞きましたが、果たしてどんなことだったか?



次回、9月25日、宮沢賢治「カイロ団長」

(文:宮地昌幸)


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