トップご挨拶イベントNEWSお知らせレンタルカルチャーエコ街のはたけてっらこや館内アクセス

過去の記事へ |次の記事へ | NEWS一覧へ













地域再生コーディネーターの役割と実践

     公開シンポジウム開催 《1月29日》
「求められる 新しい豊かさ・つながり・集いの場づくり」


パネラー 内藤正明  大原興太郎 大谷源一 市野弘


「第1回 地域再生コーディネータ養成講座」の最終講座として、1月29日、4人のパネラーをお迎えして公開シンポジウムが開催されました。シニア世代の役割や、それぞれの実践例が紹介され、コーディネーターとしての今後の展開を考える場となりました。
以下、各パネラーの発表の要約をご紹介します。


地域に根ざした新しい豊かさ

内藤正明氏(滋賀県琵琶湖環境科学研究センター長・京都大学名誉教授)

無限資源への幻想

石油を基盤にして飛躍的経済成長をみた大量生産大量消費に代表される20世紀文明。かつては地域コミュニティで譲りあい贈りあっていたものごとを、市場原理でお金を介在させ、金が行きかう量(GDP)を圧倒的に増やした。消費が活発化して家や地域はモノの豊かさで満たされた。

ところがその結果、地域の網の目のようなネットワークは分断され、さらに地域経済圏から円を東京に吸い上げていく結果となっていった。貴重な地下資源、自然資源を無造作に使い尽くしつつ、一方で大量の廃棄物を生み出すなど環境問題は人間の価値観や生き方の問題であり、20世紀文明がその前提としていた「無限の資源や空間」が実際には存在しない、我々は有限で一つの世界に生きているメッセージと共に警鐘を鳴らしている。

技術で乗り切れるのか

しかし異常気象など肌に実感を伴う問題が起きているとはいえ、自然はまだまだ十分豊かに見える。また自分一人努力したからといってどうなるものでもない、という諦観も一般にはかなり強い。だが、もし環境破壊や資源枯渇などが地球全体の4分の1まで進んだら、その倍の50%、その倍は100%と、実はあとはまたたくまに100%に達するということが日常感覚では捉えにくい。

一方で世界の市場経済をこれまで牽引していたところから、その限界を見越して森林や農地の買占めを急ぐようになっており、世界レベルでの急速な変化について、庶民はほとんど情報を閉ざされている。

またマスメディアでは電気自動車や原子力の開発など技術で乗り越えようとする動きが賑やかに紹介されている。それは一見華やかで有効に見える。しかし大量生産大量消費にならざるを得ないような、近代文明の根本を問わない限り、どんな方法も一時しのぎに過ぎない。

シニア世代の経験を生かし

ではどうするのか、化石資源を無謀に消費することにかわって、お天道さんの恵みを十分生かした農業を基本に、地産地消で地域でまず食べていける基盤を作り、地域の資源や文化、人材を生かして、これからどんなことが起きても互いに乗り切っていこうとするような、新しいひとびとの和に支えられる地域再生が待たれている。

それはいまの石油や原子力に支えられた暮らし方しか知らない世代には、一見大変なことに見えるかもしれない、しかし我々シニア世代は幼い時代にそれを経験し、その豊かさも実は十分に知っており、それをなげうって20世紀文明に邁進したことがどんなに無謀だったかに気づける世代でもある。

そして地域には実は豊かな人材や社会資源がまだまだ眠っており、それらをコーディネートする役割が必要とされている。これからの社会の方向性を見据え、長年培ってきた知識や経験を真の生きがいの方向に活かして、子々孫々に本当の豊かさ社会を贈る一役を果たしたいものである。 このページのトップへ



新しい「縁(えん)」の作り方

大原興太郎氏(三重スローライフ協会会長・三重大学名誉教授)


三重大学大学院でアジア各地からも留学生を受け入れながら農業経営学教授をしてきたが、退職後は現場主義を貫こうとNPO活動や会社経営に携わって、学者仲間では変わり者と呼ばれている。

機械化から生物化へ

いまの内藤先生の話をそのまま受けて私の立場から話してみると、近代化で市場経済が拡大され、地域社会は他依存化していった。つまり、それまで地域内で基本的に自給であったものを金の力で他に依存するようになったということである。市場経済化は短期の効率を狙わざるを得ない。市場経済下では大量に画一的に農業生産され、生産物の標準化が進み、同時に化学化、機械化が進んだ。

標準化は早めにその行き詰まりが指摘されてきたが、機械化や化学化を超えるには今後は生物それ自体の力を最大に活用して、無理や無駄を極力抑えて生態系に沿って生きる、生物化の方向が模索されている。

新しい社会基盤「縁」

地域社会は、例えば冠婚葬祭のような基本的なことでさえ、かつての血縁・地縁社会から社縁社会となった。つまり地域で協力関係が出来なくなると会社の仲間で世話をし合うようなになったが、よほど重役でもない限り退職すれば、その縁は切れてしまう。

さらにいまや会社もいつ倒産するか、あるいはいつ解雇されるかわからない時代になった現在、かつての血縁知縁社会に戻るのではなくて、近代的な個としてのお互いが地域社会を基盤に新しい「縁」をどうつくるのかNPO模索が続いている。

スローライフの活動

では現場主義をうたう私自身が退職後どんな実践をしてきたかというと、実はスマートには行かなかった。自ら舵取りする手ごたえだけは確かである。退職すると2004年1月三重スローライフ協会htttp://www.okaeri.info/を立ち上げ自然に調和した生き方を提案する活動を始めた。そんな折に松阪市が巨額を投じて造った農業公園ベルファームhttp://www.bellfarm.jp/の経営に行き詰まり、指定管理者が公募されることになった。

知り合いの企業家や団体に相談したところ、一緒に株式会社松坂協同ファームをつくり、その社長としてスローライフ理念による運営案で応募したところ、幸いにも賛同を得て、5年指定で運営に当たることになった。ここでは三里四方の生産物を食べよう、地域経済をサポートしようと、特に農家市場http://www.bellfarm.jp/shopping/nouka_ichiba.htmlに力を入れて、年61万人の入場者を見るなど喜ばれている。

2010年3月伊賀有機農業協議会http://iga-tiiki.p-kit.com/の発足から関わってみて、愛農会で若い人たちが熱心に農業を学び就業率も高いことなどに驚いた。地元で地産地消・地域づくりを望んで、生産者・消費者・行政、おのおのの立場で活動している人が大勢いることを改めて実感したが、そこに個々の願いが地域レベルで支えられるまでにネットワークを育てる役割が必要とされており、そこが弱いばかりに力を十分に発揮できないでいる。まさに地域再生コーディネーターはこれからますます必要とされる役割だろう。
このページのトップへ


あるものを活かした集いの場
川越市の陽だまり広場

大谷源一氏(財団法人 健康生きがい開発財団常務理事)

様々な環境や立場の人々、世代を超えて集い交流する場を創出することが求められている。地域に既にあるものを活かす事例として川越市の霞が関病院を紹介したい。


                               陽だまり広場

このコンセプトは、治療という苦痛の場から、地域の誰でも立ち寄れる集いの場所というもの。
その目的は、
@誰でも寄れる、
A地域の創作者に表現発表の機会を提供し収入をもたらす、
B患者が日常に変化を感じられる、
C地域のつながりの再生、
D団塊世代の知恵とネットワークを駆使して次世代の支援をする。

特にこれからの団塊世代以降の状況と役割については、東洋経済社刊『2030年超高齢未来』を参照されたい。このページのトップへ


和歌山県かつらぎ町・旧花園村こむぎの郷
農業体験と研修の取り組み

市野弘氏(健康生きがいアドバイザー)



人口450人の山村、かつらぎ町花園の人たちと、町に住む勤労者のリタイヤ組みが一緒になって農業づくりコミュニティの体験を行い、価値観の共有化により、環境が違っても健康と生きがいを持つことの大切さを学習すると共に、自然豊かに育った野菜や果物などの魅力を感じてもらおうとしている。都会と田舎のシニアもミドルも一緒になり世界遺産の高野山の麓に抱かれる自然豊かな山村地域で農業体験の実践を行なった。

1.「休耕地の活用」を研究し夫々の価値観の共有化を図る。
2.健康と生きがいの交流のなかで、夫々に「喜びを分かち合える」ことの大切さと心豊かになれる楽しさを認知し、生きがい就労に結びつける。
3.自然豊かな農地を耕し、自分の住む地域の休耕地の活用展開も研究する。

農家がコーディネーターとして材料や道具を準備、餅つきやみんなで夕食をとり、音楽祭など開催している。心の糸、つながりづくり。


福祉コミュニテイー花園こむぎの郷
このページのトップへ


参加者の感想から

公開シンポジウムの中で一番心に残ったのは、大谷さんの発表で紹介された川越市の「陽だまり広場」でした。
病院は治療するところから、苦痛を感じさせない場所、治療でなく、地域の誰もが集える場に。
予防というか、健康に明るく元気に暮らしていくための病院??が地域にたくさんあったらいいなあと思いました。
病院でなくても、人が集える、楽に集える、いつでも人に会える場が欲しいと思います。そんな場所を作っていきたいです。(辻屋康子さん

このページのトップへ

since 14.Jun.2010  Copyright SCS All right reserved.