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「持続可能な社会」実現を!地域から世界へ 
 
やさしい社会国際フォーラム2016 開催 《10月29日》T U 


鈴鹿カルチャーステーションで国際フォーラム開催

試みの共有が大きな力へ


「やさしい社会国際フォーラム2016」が10月29日、鈴鹿カルチャーステーションで開催された。鈴鹿では恒例となったこのイベントは、今年はGEN-JAPANの主催で全国縦断ツアーとなり東京から九州まで15会場で開かれた。ドイツからエクハルト・ハーン氏を迎え、環境先進国ドイツの最新報告を聞き、"自分達で創る自分達の持続可能な社会"を探った。鈴鹿では、アズワンコミュニティづくりの実践紹介と内藤正明氏(京大名誉教授)による意義と総括が語られた。
マスコミからは流れない現在進行中の世界最新情報と言ってもいいだろう。

気候変動や地球温暖化の影響は、日本でもここ数年の天候不順や異変から、より身近な問題になりつつある。しかし、不安があっても、個人の力では何もできないと考えがちだ。こと日本では、住民の暮らしは行政に頼らざるを得ない仕組みがあり、生活を守るには仕事や稼ぎに追われ、地球や環境のことを考える余裕すらないかもしれない。

そういった中でも動き始めている人たちもいる。今この地球上で起きている新しい試みを共有し合えば、諦めや無力感も覆ることもあるだろう。心や頭や体が動き出すこともある。フォーラムは、そんな熱いパワーを発信するものとなった。 (記事と写真=いわた)



NPO法人えこびれっじネット日本GEN-JAPANの一人、佐藤慎二さんの進行でスタートした。オープニングにプラネットアースの映像が映し出された。「みんなで一緒に住んでいるこの地球上で私たち人間の生き方が問われます」と始まった。











タンカー社会から帆船社会へ


エクハルト・ハーン氏(ドルトムント大学教授)  ベルリンの復興計画、EU環境部会アドバイザーなど歴任後、現在ドルトムント大学院大学教授。従来型の都市計画や建築を見直し、人間行動学をベースに、話し合いから始まる環境調和型コミュニティづくりを提案。日本文化の中に自然と人間の共生への可能性を見ている。

今回の全国縦断ツアーは、かなりのハードスケジュールと知りつつハーン氏は非常に意欲的だった。GEN-JAPANが立ち上がったことと各地で企画する人たちが大勢いることに感動していた。 「一人ひとりが本気になれば実現出来ることをドイツの最新事例で伝えたい」という意気込みがある。ハーン氏は、エコビレッジやコミュニティを作ることを目的にしている訳ではない。あくまでも人が中心で、人が協力し活かし合って作る社会の実現を願っている。そのヘルパーでありサポーターでありたいと言う。

ドイツでは34%が再生可能エネルギー
報告では4つの事例を取り上げた。都市と郊外で進行中の各々2つずつだ。
ドイツ南部のヴィルドフォルドスライドでは、1998年に再生可能エネルギーによって自家供給が始まった。12年間で発電量は3.5倍になり他の地域にも供給している。この変化は住民の意識変革になり、自立性の芽生えと経済活動に変化をもたらした。農業がオーガニックになったり電気自動車が走るようになった。そんなエネルギー村がドイツには400前後もあるという。
現在ドイツでは、34%以上が再生可能エネルギーによって発電が行われている。

エコビレッジのケースとしてはチーベンリーベンを紹介。住民が100人以上というエコビレッジは、ドイツ全体で5か所程度、20人から100人までの規模が100か所程度で、ドイツの総人口からみると、圧倒的に少ない。しかし、精神性や内面を重視し、新しい実験的な農村での暮らしの提案など、社会に与えている影響が大きいという。チーベンリーデンで開催しているセミナーには昨年一年で5000人以上が泊まりがけで学びに来ているそうだ。

「ご近所づくりをしよう!」 市民と行政の画期的な試み
都市事例の一つは、日本でも有名な環境都市フライブルグのヴォーバン地区における、「アーバンエコクオーター」づくりが紹介された。ここはでは、住民主体で環境に調和した街づくりが行われている。個人が土地を購入し家を建てるという従来のあり方ではなく、「ご近所づくりをしよう」というものだ。また市の行政も、従来のように、入札で高く買ってくれる開発業者に売るという考え方から、住民の満足度を大事にする方向に、大きく転換する転機となった事例である。

まず20家族程度の住民でグループを作って、一つの区画をどんなコンセプトでデザインするか、暮らしを描き合い、話し合いプランニングしていく。専門家も入り勉強会を開く。その全体を進めていくのは、市民により形成された「フォーラムヴォーバン」という運営組織である。

主体的な市民の動きがあって、そこに行政のサポートが入り、街が形成されるシステムだ。当初は市民に対して信頼できないなど、懸念されたが、すぐれたコンセプトを提案した市民グループがフォーラムヴォーバンによって選ばれ、そこで実際に暮らしやすく落ち着いた街並みが実現していることで次第に人気が出たそうだ。
そこに住んでみたいという希望者が増えたり、環境資源になっていったために、フライブルグ以外の都市でも新しい街づくりとして取り入れられている。

暮らしと経済活動が一つに
チュービンゲンでは特に、住居の1階を仕事のために使うというコンセプトで街並みが作られ、歩いて行ける場所に住民に必要な仕事や職場を作りだすことに成功した。120の会社が設立され751もの仕事を生み出したという。近代の工業化社会では見られなくなった、暮らしと経済活動が一つになった、画期的な街づくりが普及し始めている。

車も半分は処分しカーシェアしている。 「車のために場所を使うくらいならそのスペースを子どもの遊び場にしたい」という発想による。こうして出来た街並みは美しく多くの観光客も訪れるという。

都市で進むもう一例にエディブルシティがある。市の空き地を不法占拠して、コンテナで野菜栽培をはじめたのがキッカケだ。現在では定着しはじめ、ガーデニングが盛んになり、野菜や花で緑化されている。廃材のリユースや養蜂が盛んに行われている。

ハーン氏は、持続可能な社会の方向を船に喩える。「大きなタンカー社会から小さな帆船の社会へ」と。未来の持続可能な街というのは以上述べてきた方向にあると提言した。


ハーン氏の通訳を務める荒田鉄二氏(鳥取環境大学准教授)


「人間の創造力を社会面に発揮!」鈴鹿コミュニティの活動


小野雅司氏(サイエンズ研究所研究員)
 人と社会の本来の姿を明らかにする研究活動と同時に、コミュニティづくりに関する教育プログラムに携わり、また、日本、韓国、ブラジルなど各地のコミュニティづくりの実践的サポートを進める。

都市型エココミュニティって?
鈴鹿コミュニティの事例は、ドイツのケースと違い、都市の中で一見どこにそのコミュニティがあるのか見て分からない点にある。再生可能なエネルギー発電があるわけでも、住民の共同住宅があるわけでもない。いったい何が持続可能な社会で、都市型エココミュニティと言えるのか。
それは、「持続可能な社会は持続可能な人間関係から」という着想で、住民の暮らし方の違いにある。

建物や住居は現状のままでも、人同士がより親しくつながることで、まったく新しい社会を創出している点だ。会社を起こし、職場を作り、暮らしに必要な様々なものをシェアし、無駄の出ない暮らし方を実現している。エネルギー消費量も一般と比較すると随分低いらしい。このコミュニティはエコロジーや自然思考から生まれたものではなく、「そもそも人とは、社会とはどんなものか」を「ゼロから探究しよう」という研究活動がその出発点になっている。

16年間の研究と実践
研究に携わる小野氏(サイエンズ研究所)の発言では―――

「物質面では、科学技術の進歩が歴然としている。これは人間の創造力によるものだろう。しかし社会面では、戦争、貧困、環境破壊と問題が絶えない。人や社会のことには創造力が発揮されていないからではないか。何故か?
常識や固定観念、キメツケが人間の創造力を阻んでいる。
"空なんて飛べるわけがない"と決めつけてしまうと、"飛ぼう!"という発想は生まれない。同じように、"人間とは、社会とはこういうものだ"というキメツケや固定観念が持続可能な社会の実現を妨げているのではないか。
一度ゼロに立ち還って考えていくことが必要だ。そのゼロ地点からの研究を16年間続け、実践してきたのが『鈴鹿コミュニティ』だ」と言う。

社会は、個人が自由にしたら秩序が保てない。ルールと罰則を設け、権利義務責任を課さなければ成り立たない・・ そんな常識がないだろうか。
これをゼロから見直すとはどういうことか。
その一つの試みに「上下・命令・規則・責任もない会社」がある。また、お金を介在しない経済の仕組みやお店の運営、自然体験や森林ボランティアなどユニークな活動がある。
その様子を小野氏がスクリーンに映しながら解説した。

今年は、会社の様子をまとめた本も出版され反響を呼んでいる。年々各地から、持続可能なコミュニティづくりを学びたいと留学する若者も増えている。

次ページに続く>>>「持続可能な社会」へ パイオニアの一歩を!



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