「笑いをとる落語じゃないんですが…」
一主婦が言い出した落語会が大ウケ! 《2015年4月19日》
人によって笑いのツボというのは違うもので、このネタのどこが可笑しいの?
そんなギャグもあるものです。
長島龍人さんの落語、「お金のいらない国」を笑えた人は、どこか世間の常識とズレた感覚の持ち主なのでしょうか?
今回、SCSで開かれた落語会に集まった人たちは、腹を抱えて笑っていました。
いったいどこがそんなにウケたのでしょう?
龍人さん曰く「笑わせようという落語ではない」そうですよ。
●青年と紳士のちぐはぐ問答
落語は、現代に暮らす青年が「お金のいらない国」に迷い込み、そこに住む紳士とのやりとりを描いたもの。双方の常識が噛み合わず、そこに生まれるギャップが可笑しい。
青年「お金があれば贅沢が出来る」
紳士「贅沢って何ですか?」
青年「自分がほしいものを何でも買ったり、おいしいものを食べたり…」
紳士「ここでは、ほしいと思ったものは何でも手に入りますよ」
青年「必要以上のものとか、値段の高いものを手にすることですよ」
紳士「そんな必要ないものを手に入れてどこが面白いんですか?
とりとめもない欲望を追ってもキリがないでしょ」
と、こんな調子で、問答が続く。
青年は、「お金をもらえなきゃ、みんな働かなくなってしまう。自分も働かないよ」と頑固に主張する。
紳士は、「
お金と働くことを固く結びつけて考えすぎですよ」 「あたなの国では、お金で欲望をコントロールしているようですね」
とツッコムものの、青年はただ不思議でならない。
お金のいらない国では、お金がない。何でもタダで手に入る。遊んで暮らすことも出来る。青年は、しばらくそんな暮らしを体験し堪能していく。どこにいってもよくしてもらい、やってもらってお礼までいってもらえる。嬉しくてしょうがない。青年は何か人の役立つことをやりたくなってくる。
「こんなんだったら、私も何か人のために働きますよ。お金?お金なんていりませんよ」
青年は、もうすっかり考えが変わっていた。
●心地よい風が吹き抜ける
登場する紳士役の語り口(長島さんの演技ですが)を聞いていると、時間がゆったりと流れていく。金のない国は、それぞれが本当にやりたいことを心ゆくまでやっている。腹のたつようなこともなく、犯罪や暴力、争いもなさそうだ。みんなが平和に暮らしている。その空気感が伝わってくるようでもある。
いろんな物事にこだわっている青年がいつしか滑稽にも思えて来る。と同時に、贅沢だったり、貯金だったり、お金だったり、そんなこだわりが、どうでもいいもの、にも思えてしまう。気持ちにちょっとした隙間が空いて心地よい風が吹き込んでくるような感覚にもなった。(あ、ヤバいヤバい自分も可笑しな人になってしまう!)
これが第1話で、長島さんの著書『お金のいらない国』の中身を落語で演じたもの。
本の内容を人に伝えるために、最初は寸劇仕立てだったものが、観客の要望で落語となり、その演技も上達してきたそうだ。というわけで龍人さんは噺家(落語家)ではない。
本にはシリーズがあり、第4巻まで出版されている。
「お金のいらない国」での、結婚、法律、裁判、教育など様々な話題を提供している。
●公子さんもちょっと変わりもの?
そもそも、この落語会をやりたい!と言い出したのが、アズワンコミュニティに住む江口公子さん(上の写真)だ。この人もちょっと頭が可笑しい(?)のか、長島さんが考えるような「お金のいらない国」を、自分たちの住む街につくっちゃおう!と活動する一人なのだ。そのイメージする世界観を長島さんとも共鳴して、「私たちのつくるコミュニティを是非、長島さんにも見てほしい!そして、落語もやってほしい!」と、老骨(?)にムチ打ってこの企画に奔走したのだった。
公子さんの思いは通じ、夢が現実となった。
長島さんとそのマネージャーのあおきゆうさんが前日から訪れ、アズワンコミュニティを探訪した。長島さんは自分の考えていた世界を現実に試みる様子に目を丸くし、その驚きを落語会でも語った。
「ここには、変わった方がいっぱいいらっしゃる。
私なんか考えて書いただけですから、私が聞きたいほどです」(会場笑い)
長島さんはデンツウにつとめる会社員で(この春早期退職されたが)、
入社して10年ほどして、お金の煩わしさを考え始めたそうだ。「お金は、
人間の作った便利な道具だが、はたしてこれでみんなが幸せになっているだろうか?」と。
会社では、広告業務以外に、お金のメンドクサイやりとりが仕事に付きまとう。
いっそお金をなくして仕事だけで社会が回っていかないか、と
発想する。
お金がなければ、詐欺もなくなる、
「お金のいらない国」になったら、と考え始めた。
そのイメージを一冊にまとめたのが『お金のいらない国』。2003年の出版となった。
●龍人さんアズワンにビックリ?
アズワンコミュニティを探訪した長島さん。その感触にも触れながら…
「昨日もおふくろさん弁当の会社にいって社長さんのお話を聞いたんですが、
お金のために働いているんじゃないよ。というのがひしひしと伝わってきました。
そんなこと、やっぱりあるんだ」(会場爆笑!)
「自分の考えたことはあながち間違ってないな―と、とても心強く思いました」(会場爆笑)
「現実にあるんだ!」
●「お金のいらない国」では無駄なエネルギーはいらない。
長島さんのお話をもうすこし紹介します。
お金のいらない社会になって、必要なものが手に入るようになったら、人間は仕事をしなくなるのか、という問題なんですが、
お弁当屋さんにいって自信持ちましたけど、
仕事しないで、ずっと寝ているのって大変ですからね。遊ぶっていってもね。遊びたい人はずっと遊んでいてもいいでんすけど、でも働きたいって人もかならずいるんでね。いろんな人がいていいと思うんですよ。みんな働かなきゃいけないってこともないんで。
ややもするとですね、今の社会では、専業主婦ですね。ご飯をつくったり子育てしているのに、人間にとってもっとも大事な仕事をしているのに、お金をもらってないから仕事してないみたいに言われる。無茶苦茶ですよね。へんな社会だなって思います。
自分のやりたいことをやれば世の中うまく収まる気がするんですね。
今の社会は人と差をつけないと優越感に浸れないんですね。でもお金のいらない国は人と差がつかない社会なんで、どんなことでも出来ちゃうから。豪邸に住みたければ住める、だから逆に人と差がつかない。そうなったら自分はどうしたいか、そんな想像をしてみたらどうでしょう。
中には贅沢な暮らしをしたい人もいると思う。でもそれを死ぬまでやりたいのかっていうと、そうでもないような気もします。
自分にとって満足する暮らし、落ち着ける暮らしとはどんなものか、考えてみて下さい。人それぞれと思いますが、結構、そこそこのところで満足できるんような気もするんです。
儲けるために余計なものも作らなくてもいいので、いるものだけしか作らない。いいものしかつくらない。だから資源も無駄に使わなくなる。安かろう悪かろうなんてものもない。そんなの必要ないですからね。想像をしていくと面白いです。
●場数を踏んでも緊張する?
突然、間違えて、リトライ。
ところが、また間違えてしまい、「今日は緊張しちゃって」
と。
『イマジン』を翻訳してうたう。
自分が作詞作曲した『「お金のいらない国」の歌』を披露する。
●のりのりで第4話まで演じる♪
落語会も終盤、交流会も残すところあと10分となった。
「まだ少し時間があるので、じゃあ、4話目もやりましょうか」
と龍人さんもノリノリ。
会場からも盛大な拍手で、本のシリーズ4の「学校は?教育は?」を演じた。
●交流会
交流会では会場との質疑応答。
参加者の一人が「私はアズワンコミュニティに住んでいるわけではありません。
一市民として、何がやれるでしょうか?」という質問があった。
話の流れで、その質問にその場で答えられなかったので、
後で記者が質問してみた。それには
「まず、自分が想像することが一番大事なんじゃないでしょうか。
この話を受け付けない方も大勢います。でもこの10年くらいでだいぶ私の話も
受け入れられるようになってきました。世の中だいぶ変わってきたと思います。
心の中にそういう世界をつくること。
価値観が変わってくる。
ある日、突然、お金のいらない世界になっているかもしれませんよ」
と語ってくれました。
終了後、長島さん、あおきさんとお茶を飲みながら懇談。話は尽きず。
昨晩も江口宅で深夜2時まで話していたそうですから、本当にお疲れ様でした。
最後に記念撮影。
その後、アズワンコミュニティのストアー(お金のいらないお店)にお二人を招待して体験してもらいました。お弁当とお野菜を手にしていかれました。
あおきさんが「やっぱり、タダだとその時必要なものしか持っていかないわ」
そんな、実感をもらしていました。
今の社会は間違っている! 戦争反対!世の中おかしい!
そう思う人! 是非、龍人さんの落語を聞いてみてください。本をお読み下さい。
そして、アズワンコミュニティにも来て見て下さい。
そして、ちょっと変な人になってみて下さい。
世界が変わってきそうです。
(こんなことを書くなんて、記者も少々頭がイカれはじめてきた)
レポートは続きます。後半は参加者の感想と舞台裏など。(写真・記事:いわた)